インタビュー

村上未来さん インタビュー

2017.05.01

ベンチャー企業で働くことの”醍醐味”

~世界に誇れる会社にしたい、ユーザベース管理担当執行役員のチャレンジ

 

当「Interview」は志を持ち活動する方、とことん何かに打ち込む方、インタビューを通じ、そんな魅力あふれる公認会計士のストーリーに迫ります。

さて、第3回目は、2016年10月に東京証券取引所マザーズ市場への新規上場を果たし、2008年設立以降急拡大を続ける株式会社ユーザベースで、管理担当執行役員を務める村上未来さんです。村上さん(以下、敬称略)がどのような思いで業務に取り組んできたのか、そして、今までをどう振り返り、今後どのようなビジョンを描いているのか、夢中になってお伺いしました。インタビュアーは横井・朝倉・辰巳(以下、青年部)でお送り致します。

ユーザーベース村上さん

青年部:

まずは、村上さんのルーツを教えてください。

村上:

東京都町田育ちです。大学が慶應であったため、周囲に会計士を志す者が多い環境の影響もあり、自分も会計士試験の勉強を始めました。

卒業した年に合格し、独占業務である監査業務をまず経験すべきだと考え、監査法人に入りました。監査法人では監査法人でしかできないことを常に意識し、企業会計監査業務を中心に、公会計監査なども経験しました。5年間の監査業務の後異動し、1年間トランザクションサービスの部署で働きました。その後、トランザクションサービスでの仕事をきっかけとして、M&A業務に興味が深まり、投資銀行に転職しました。投資銀行では、M&A実務や、企業のバリュエーションすなわちマーケットから企業がどのように評価されるのか、を徹底的に学びました。そのときに学んだバリュエーションやコーポレートファイナンスの知識は、今の仕事でも大変役立っていると感じています。

その後、ずっと金融の世界でどっぷり働いている自分の姿を想像できず、元々独立を志向していたこともあり、前々から興味があったヘルスケアの分野で独立の足がかりをつかみたいと考え、KPMGヘルスケアジャパンに転職しました。KPMGヘルスケアジャパンでは、介護オペレーターのコンサルティング、ファンドによるヘルスケア関連会社の買収時のDDからポストディールサービス、病院の資金調達の支援などを経験しました。

そして、KPMGヘルスケアジャパンでの3年間の経験の後、独立しようと思い、退職しました。しかし、この時普段から懇意にしていたユーザベース創業者の新野さんからユーザベース参画の誘いがあり、自分が成長できるまたとない機会だと考え、ユーザベースへの参画を決めました。

ユーザベースへの参画を決めた理由は二つあります。一つ目は、投資銀行時代の同僚が設立した会社で、設立当時から会社の状況をよく聞いていました。すごい会社であることはよくわかっていたし、世界で戦える企業になると思っていたためです。二つ目は、マネジメント層をよく知っており、信頼し、かつ尊敬する人達だったためです。一般的には、ベンチャーに転職する際は、その企業が成功するか否か、またマネジメント層がどういう人達かという不安があると思うのですが、私にはこの二つの理由により、不安はありませんでした。

青年部:

独立を志して退職したのに、ユーザベースへの入社を決めて、未練はなかったのでしょうか?

村上:

いつになるかはわかりませんが、将来的な独立志向は今も選択肢としては持っています。スタートアップ企業を上場まで導くという経験は独立にも役立つし、つながっていると考えています。将来的な独立を考えた場合も、そこで得た経験はきっと役立つだろうと考えられたこともユーザベースへの参画の決め手の一つでした。

青年部:

なぜ独立を志されているのでしょうか。

村上:

独立することによって究極の「当事者感」を持ちながら仕事に臨める、と考えるからです。プロフェッショナルファームよりも現在の立場の方が遥かに「当事者感」を感じることができています。その点、現在の仕事には非常に満足しています。もしかしたら、独立することで更なる違った世界があるかもしれませんが、現在は今の仕事に集中しています。

青年部:

ユーザベースへの入社前後でのギャップはありましたか?

村上:

当初は、全ての仕事が自分の(会社の)仕事なので、当事者として取り組んでいる感覚がエキサイティングでした。例えば、自宅の壁が壊れた場合、誰かにやらされるのではなく、当然に自ら直しますが、スタートアップの事業会社での仕事はこれと同じ感覚で、全てが自らの仕事です。

また、いろんなメンバーがいて新鮮でした。今までは、監査法人、投資銀行、コンサルティングファーム、とすべてプロフェッショナルファームであり、同質的な人の集まりだったと思います。しかし、スタートアップ企業にはいろんな人がいる。才能の有り方もいろいろであり、目指す方向もバラエティに富んでいる。

当初は言葉遣いも含め、戸惑いもありました。一方で、皆ユーザベースの成長という同じ方向に向けて、一丸となって頑張る一体感が、これまで働いていた会社とは全く違うと感じたことを覚えています。

青年部:

監査法人のようなプロフェッショナルファームにおけるチームマネジメントと、ユーザベースにおけるマネジメントの両方を経験してみて、どのように感じられていますか?

村上:

私自身が勉強中であり、今も試行錯誤している状況です。ユーザベースのメンバーは、仕事に対するスタンス、目指す方向も様々です。そのようなメンバーに対し、どのようにすればメンバーが力を発揮するかを常に考え、モチベーションを鼓舞するマネジメントは、プロフェッショナルファームでのマネジメントとは異なり、今まで経験しておらず、簡単ではないと感じています。自分の次のステップはまだ分かりませんが、同質的なメンバーが集まるプロフェッショナルファームは世の中ではむしろまれで、将来どのような仕事を行うにせよ、いろいろな方々と仕事をしていくと思っています。そのような方々とコミュニケーションを行い、信頼を醸成することは、非常に重要なスキルであり、自分の成長にとっても不可欠と捉えています。

青年部:

ユーザベースでやってきたことはどのようなことでしょうか?

村上:

一言でいうと会社の著しい成長を支えるためにバックオフィスのオペレーションを必死に作ってきたということです。また、今も作っています。具体的には、以下のようなことをしてきました。改めて振り返ると、バックオフィスチームの歩んできた努力の足跡であり、頭が下がる思いです。

1.  月次決算
まず、月次決算を締められるようにしました。入社当初は月次決算が数か月締まっていない状況でした。そのために、経理の方を採用する、というのが最初の課題でした。その次のステップとしては決算早期化に取り組みました。当初一か月かかっていましたが、マイルストーンを設け、10日、8日と早期化し、今は連結を6営業日で締められるようになりました。早期化の取り組みを要約すると経理業務の標準化ですね。

2.  勤怠管理
勤怠管理が必ずしも十分ではなかったため、整備しました。会社が大きくなるためには、労務管理が必要になってくるので、労務管理ができる方を採用し、就業規則を整備しました。就業規則を作って終わりという単純な話ではないです。特に、ユーザベースは自由主義、成果にコミットする社風のため、時間で管理する考えは合わない。一方で、労働基準法をはじめ法令を順守する必要がありました。結果としてフレックス、コアタイムなし、勤務地は自由にしました。

3.  法務機能
法務に関しても、私が契約書のレビューをしていましたが、グローバル企業との取引も増え、法務責任者の採用等、法務機能の充実化を図りました。

4.  広報機能
ニューズピックスというB To Cビジネスが始まり、広報の専任者を雇い、広報機能を整備しました。

5.  給与計算
従業員が百人を超えると、それまでアウトソースしていた給与計算が、情報の機密性もあり、データの受け渡しだけでも非常に煩雑な作業となってきました。アウトソースをしていた給与計算について効率化のため内製化をしました。

まとめると、会社の成長に合わせた、管理機能の設置・充実化を行い、少しずつ業務の標準化を進めてきました(業務標準化はまだ道半ばですが。。)。また、入社からの4年間で、その他にもコーポレートイベントとして以下のような経験をしました。

・海外進出(支店がいいのか、子会社がいいのか。法務・税務の観点からも検討)

・金融機関、VCからの資金調達

・ストックオプションの設計・発行

・他社との業務提携の締結

・会社分割

・会社の引越し

・上場準備

入社したときは正社員が40名でしたが、今は世界に約200名います。

青年部:

会計士はベンチャー企業で活躍できると思いますか?

村上:

会計士のバックグラウンドは、管理部の仕事と親和性があり、役立つ面は当然あります。

大企業ではないため、意思決定だけでなく、プレイングマネージャーの役割を担いますが、会計の知識はもちろん、監査を通じて得た様々な知見、会社法の知識等、実務においてこれまでに培ってきた会計士としての経験が、気づかないうちに色々と役に立っていると思います。

青年部:

ユーザベースは年功序列というよりは、成果に対して評価する人事評価制度を採用していますが、成果が出ない場合や労務管理はどうしているのでしょうか?

村上:

人事考課の仕組みは創業者ノウハウにより、当初からかなりきちんとしたものが確立されていました。半年ごとにプロジェクト毎に定量要素を加味してゴールを設定し、同僚の評価を集めて360度評価をします。その後、執行役員以上の会議で査定していく。これは40人規模のときから継続していることです。

現状は中途採用中心ですが、体系的な研修システムが整備されておらず、入社後いきなりOJTとなり、メンバーにはかなりの自立性が要求されます。例えば新卒メンバーにとっては少し厳しい環境であると考えられ、この点は今後の課題として挙げられます。また、今後グローバルで従業員も増えていくため、メンバーのモチベーション向上のための仕組みの整備が必要と考えています。

青年部:

退職される方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

村上:

私が入社した当初は、退職者は全然いませんでした。ベンチャー企業としては、非常に従業員の定着率が高いため驚いたのですが、今も定着率は高い方だと思います。今は、退職者はグローバルで年間10名程度と、総じて辞めていく人は少ないと思います。

青年部:

ユーザベースで村上さんがやりたいことは何でしょうか?

村上:

世界に誇れる会社にしたい。ユーザベースで働けることがうらやましい、サービスを使うことが誇らしい、管理部自体も誇れる組織にしたいと考えています。ユーザベースの管理部15人のうち、ワーキングマザーが4人います。多様な働き方ができ、そして、管理部のメンバーと管理の仕組みが世界に誇れる「攻める管理部」にしたい、と考えています。

青年部:

ユーザベースで大変だったことは何でしょうか?

村上:

大変なことばかりです。仕事や組織は拡大し続けるので、いつになったら楽になる、というのはありません。上場も果たしましたが、さらに米国、英国の進出を考えており、チャンスがあれば今後M&Aもするかもしれません。上場がゴールではなく、さらなる成長をし続けて行く必要があります。

ただ、上場準備は、やはりハードでした。途中で予測不可能なアクシデントが起こります。そういったアクシデントをメンバー一丸となって乗り越えましたが、正直ハードでした。しかしながら、今後もいろいろあるでしょう。この波乱万丈な環境を、前向きに楽しめるマインドが必要だと思います。

青年部:

事業会社やベンチャーにチャレンジする方に向けてのメッセージをください。

村上:

是非チャレンジして欲しいと思います。たとえ、入った会社が上場できなくても、入った会社がつぶれたとしても、キャリア上、全くマイナスにならないです。かけがえのない経験が得られ、やってきたことを語れれば、必ず次につながります。迷う必要はないです。チャレンジしたいという思いがあるならば、チャレンジするべきだと考えます。

チャレンジした後、監査法人に戻ってもいいし、違うベンチャーに行ってもいい、大企業のベンチャー投資部門にも行けるかもしれない。自分が本気で取り組むことが重要だと思います。

青年部:

会計士業界へのメッセージを頂けますか?

村上:

もっともっと活躍できる場が広がってよいと思います。いろいろな場で、特に事業会社やスタートアップ企業に会計士が進出し、活躍すれば、日本の会計リテラシーが底上げされると思います。