インタビュー

米田惠美さん インタビュー

2016.03.11

「社会」と「仕事」と「自分」がつながっていることが理想

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さまざまなフィールドで活躍している公認会計士を紹介するインタビュー企画。
記念すべき第1回目は、我らが青年部部長 米田惠美を直撃。
自身のルーツ、業界、青年部の活動にかける熱い想いを語ってくれました。


Q1 公認会計士を目指した、きっかけは?

公認会計士の存在を知ったのは、高校2年生のとき、経営学の選択授業のゲストに会計士の先生が来たこと。大学受験がなかったので、早くから「将来を考えなさい」と言われていたけれど、何をしたらいいのか全然わからずに迷っていました。人の役に立つ仕事、というのは大前提だったんですけど、それもまた抽象的。もう少し掘り下げてみると、なんで「女性は働きにくい」と言われるんだろうって、ふと疑問を感じたんです。当時は今ほど、女性も社会で活躍するべきだと、声高に叫ばれてはいない時代。働くことと、誰の役に立ちたいのか、その組み合わせを考えたときに浮かんだのが、女性が働きやすい世の中づくりにちょっとでも貢献できたらいいな、ということでした。

といっても、これまた何から手をつけていいのか、、社会のシステムそのものもよくわからない。ただ、何事にもお金が絡むんじゃないか、という漠然とした思いはあって。もしかして公認会計士になったら、その先が少しは見えるかもしれないな、と感じました。


Q2 これまでの経験、仕事について教えてください。

新日本有限責任監査法人に入って、まず担当したのは監査業務。また、3〜4年目の頃は就職バブルの時期、法人の採用方法に違和感を感じて、インターンシップのプログラムをゼロから立ち上げたりもしました。ひととおりの監査業務を学んだら転職しようと思っていたこともあって、ちょうどプロジェクトのメドが立ったタイミングで、パートナーにお礼のメールを送ったんです。すると、「僕はいつか絶対、米田さんと一緒に働きたいと思っている」と言われてしまって。もちろん、向こうからすれば軽い気持ちだったと思うんですが、そろそろかな~と思っていた私には、妙に刺さってしまったというか……。その人とは、ふだんから「こういう法人にしたい」なんて、組織についてもよく話していたんですよね。

メールをもらって、ふと思ったんです。私はインターンシップこそ立ち上げたけれど、もっと大事だと感じていた組織の課題に対しては、何もアプローチしていなかったんじゃないか。当時、法人で働いていた6000人に対して何もやってこなかった人間が、社会だ何だなんて言う資格はない。じゃあ、ここでやるだけのことをやってみよう、と。それには、とにかく仕事で結果を出さないといけない、ということで一転「超仕事人間モード」に。壮絶な監査チームの仕事を乗り越えたあと、アドバイザリーのチームに移って、国際会計基準(IFRS導入)プロジェクトなども経験しました。

いつか社内の風土を変えたいと思ってずっと走ってきて、マネージャーになってようやく携わることができたのが全社風土改革、今でいう組織開発のプロジェクトです。長年組織を観察し続けて見えてきた課題に、どうしても取り組まなくてはという危機感。また、人と組織がどう動くのかと、社会がどう動くのか、その2つは絶対に関係があるから学んでおきたいという思いもありました。当時は、まだ社内が改革の準備段階にすらなかったという状況もあって、うまくいかないこともたくさん。私も未熟だったので、失敗して学んだことのほうが多かったですね。組織を動かすのは、すごく繊細な作業、しかも本当の意味で人の役に立つって、口で言うほど簡単なことじゃない。よかれと思ってやったことでも、相手にとってどうかはわからないし、独りよがりでもダメ。自分に力がなければまったく役に立たないので。

私が独立したきっかけも、こうした領域をもっと専門的に勉強しようと思ったから。人事や組織開発を中心にしたコンサルの仕事をしながら、もともと目標にしていた「社会システムデザイン」のために、保育士の資格を取ったり。歩みは一歩ずつで遅いですが、今では、大企業の研修や組織変革のほか、ベンチャーの組織づくり(スタートアップ期の支援プログラム)のお声がけもいただき、やりたかった仕事に近づいていると実感できるようになりました。私、仕事を引き受けるときは毎回、自分なりに意味を考えるんです。関わる仕事を通じて、日本に失敗を許容する文化、挑戦する文化が広められたらいいなと思っています。


Q3 一番印象に残っている仕事は?

法人に入って6年目くらい、監査チームにいたときの経験が壮絶でした。リーマンショックのあとなんて、毎時間おきに倒産情報を確認するくらいヒヤヒヤの連続。担当していた会社の方に「うちをつぶす気ですか!」と怒鳴られたこともありましたね。

おそらくいろいろな事情があったとは思いますが、最初のうちは常に対決姿勢。信じられないかもしれませんが、何度も何度も大げんかをしたくらい。でも、ピンチを共に乗り越えていったからでしょうか、最後私がチームを離れるときには、みんなが集まってくれて、涙涙の別れに。きっと、初めは「なんでこんなことを言われなくちゃいけないんだ」という感覚だったのが、「あれ? この人、もしかしたらウチの会社のことを思ってくれているのかも」というふうに変わっていったんだと思います。あ、これはあくまで私の印象なので、相手は今も「あのやろー」という感じかもしれませんが(笑)。

私は、監査の品質とクライアントにとってのバリューは両立しうると思っています。つらいけれど、監査人は絶対に逃げちゃいけない。それが私たちの存在意義なんだから、経営者と同じように覚悟して生きなきゃ。重要なのは、揺るぎない信念をもって、最後まで諦めず、真摯に向き合い続けること。たくさんのことを学ばせてくれた当時のクライアント、そして上司には本当に感謝しています。


Q4 最近気になっていること、ハマっていることは?

宣伝っぽくなってしまいますけど(笑)、青年部の活動です! 1円も生まない活動に、どうしてこんなに時間を割いているのかというと、やっぱり意義があると信じることを、楽しんでやっているから。組織ではできなかったこと、自分ひとりではできないことを実現できるような気がしていて。利害関係を超えて共感できる素敵な仲間が集まっているので、成長させてもらっているし、いつもわくわくしています。まさにプライスレス!

それから、代々木公園にある「フグレントウキョウ」というカフェにもハマっています。ノルウェーにあるカフェの海外進出一号店で、「飛行機に乗ってまで飲みに行く価値がある世界最高のコーヒー」といわれているほど。コーヒーの味はもちろんですが、私が好きなのはその空気感。店の前でたまたま会った人たちが「ひさしぶり」なんて言ってハグしていたり、出て行くときに「行ってらっしゃい」と声をかけてくれたり。そこに集う人たちみんなが幸せそう。北欧らしいというか、ここにいたいと感じさせてくれるカフェです。


Q5 あなたの“お気に入りのもの”を教えてください。

これ、新日本をやめるときに、みんなが贈ってくれたアルバムです。なんていうか、仲間たちの想いがうれしくて、どんな気持ちでこれをつくってくれたのか想像するだけで泣けてきますよ。Q1にも登場した「一緒に働きたい」って言ってくれたパートナーは当時ロンドンにいたのに、わざわざメッセージを寄せてくれて。つらいときにはいつもこれを開いて、頑張ろうと気合を入れています。

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Q6 スキルアップのために実践していることは?

月並みですが、日課は読書。あとは、「この人、会ってみたい!」と思ったら、迷わず会いに行くこと。青年部の活動でもそれを心がけていて、ここのところ本当に感動するような出逢いが続いています。監査法人時代はそういう出逢いはなかったんですが、それってきっと、自分が動いてなかっただけなんですね。ちなみに、今会ってみたいのは「ほぼ日」のCFOの篠田真貴子さんとチェンジウェーブ代表の佐々木裕子さん。「チームラボ」にも行ってみたい!

それから最近意識しているのは、自然やアート、デザインに触れること。数字とか戦略とか、ふだんどうしてもお勉強的なものに走りがちな脳をリフレッシュさせるというか感性を開くというか。この間も、六本木のミッドタウンでやっていた「DESIGN TOUCH」に行って、建築家の隈研吾さんが手がけた「つみきのひろば」を観てきました。


Q7 将来やってみたい仕事は?

いろいろあるんですけど、何かしらの形で「社会システムデザイン」には関わっていたい。場所ややり方に固執したくないので、今は幅広いスタンスをとっています。直近では、在宅医療の診療所の立ち上げに関わっていました。私は子育て・親育てに興味があるので、地域で子どもを見られないか、というところがスタート。でも、医療費がかさんで子どもにまでお金が回らない、じゃあどうやって削減すればいいんだろうと考えた結果、その課題にたどり着きました。

国家財政という観点からしても社会保障費の増加は避けて通れないし、高齢化、少子化どちらも日本にとっては大きな問題。ただ、机の上の議論だけをするのは好きじゃないし、現場の人たちにしか見えないことも絶対にあると思っています。その人たちと同じ目線に立つためにも、現場で手を動かすことも忘れない。現場感と大局観のどちらも大事にしつつ、公認会計士というアイデンティティを活かして仕事をしていたいですね。

そもそも「社会システムデザイン」とか「社会起業家」みたいにかっこいい言葉は、ちょっと私にはしっくりこなくて。「私が制度を変えました!」じゃなくて「気づいたら変わってたね」っていうような、たとえるなら、船の向かう方向を一度変えるくらいの関わり方をしていきたい。
この間、大河ドラマ「花燃ゆ」を見ていたら、吉田松陰が「どうか一粒の籾として次の春の種となれますよう」と言って亡くなったんです。比べるのはおこがましいけれど、その感覚、すごく共感できるなぁって。自分は一粒の種で、次の世代の人たちがそれを花開かせて、っていう循環がつくれたらうれしいですね。

青年部では部長をしていますが、本当は弱い人間だし、昔から人前に出るのが大の苦手で、ものすごく緊張しい。なので、「CPA TALKs」では、ゲストが私のいろんな想いを代わりに語ってくれるのでありがたいんです(笑)。部長は頼りなくても、志を共にする仲間の力を借りつつ、たくましく航海し続けていけたらいいなと思っています。

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Q8 あなたにとって「理想の公認会計士」とは?

ひとつは、社会と仕事と自分がひとつの線でつながっている人。仕事と自分がつながっている人はたくさんいるけれど、それだけじゃない業界にしていけたらいいですね。社会にどんな課題があるか、そこに自分がどう貢献できるのかを考えて行動すること。大それたことでなくてもいいから、まずは今の仕事を通じて社会は良くなっているのか? ということに、ほんの少し意識を傾けてくれる人が増えたらうれしいです。

もうひとつは、物事の本質を見極めて行動できる人。対処療法に飛びつかず、根っ子のところにアプローチできる人でいること。一部の制度は変わったけれど、根本的な問題は何も変わっていない、みたいなことって、世の中にはいっぱいありますよね。会計士はミクロとマクロ両方の視点を持てるのだから、複雑な問題でもあきらめずに考え抜くことが重要。そして、もちろん行動することも。公認会計士とは、物事の本質にアプローチできる人たちである、そう胸を張って言える日が来たらいいですね。

それには、まずは私自身がしっかりしていないといけないし、成長しなければ……。挑戦したいこともたくさんあるので、これからも全力で走っていきたいと思います!

 


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米田惠美

2004年 公認会計士2次試験合格 同年 新日本有限責任監査法人入社。
2006年 慶應義塾大学経済学部卒業。
監査法人では上場・非上場企業の監査、IPO支援、内部統制構築支援、IFRS導入支援、地方自治体の包括外部監査業務等に従事。2010年にはEY Value Award 獲得。2013年 かねてより夢だった社会システムデザイン、社会福祉、組織開発の勉強のため独立。翌年、保育士試験を受験し、保育士資格取得。組織開発コンサルティング会社と個人会計事務所の経営に従事。自治体を通じ社会福祉法人等への会計調査・助言業務を行う傍ら、会計面だけではフォローしきれない人と組織の課題に取り組むために、上場企業やベンチャー企業に対し、ビジョン構築・チームビルディングなどの組織作り、風土改革、マインドセット、管理職向けのマネジメント研修、エグゼクティブコーチング、コミュニティデザインなどの各種サービスを提供。